1. a Brown Girl

3/21
前へ
/39ページ
次へ
ちなみに式はまだ半分も進んでいない。 こんな式、ただ退屈なだけだ。 もう少し簡略化できないものなのか……。 一回りした時計を見て溜息を一つ落とす。 そうして視線を変えたことによって、俺はある一人の背中に移すことになる。 高校の規則で髪を染めるのは禁止されているので、結果として黒い頭が並んでいるのだが、その一人だけブラウンの髪をしていた。 色としては決して明るすぎるというわけではないのだが、周りが黒だということもあって、その腰まで伸びる髪は目立ちすぎるのだ。 まったく、入学初日に規則を破るなんて、偏差値はそこそこ高いはずなのに……。 と、考えてボーっとその背中を眺めていたら、いつも間にかその人も俺の方を見ていた。 「あ」 不意なことで間抜けにもそんな声をだしてしまう。 一度合ってしまった目をそらすこともできず、数秒そのままこう着状態が続く。 すっきりした顔立ちで、鼻がすらっと中央にそびえ、薄桃色の唇に、長いまつ毛。 何よりダークブラウンの髪と澄んだ瞳に俺はしばし夢中になってしまった。 一言でいえば美人、それに尽きる。 って、こんなことを考えている場合じゃない。 さすがに気まずくなってどうしようか戸惑っていると、その彼女はニコリと微笑んできた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加