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ちなみに式はまだ半分も進んでいない。
こんな式、ただ退屈なだけだ。
もう少し簡略化できないものなのか……。
一回りした時計を見て溜息を一つ落とす。
そうして視線を変えたことによって、俺はある一人の背中に移すことになる。
高校の規則で髪を染めるのは禁止されているので、結果として黒い頭が並んでいるのだが、その一人だけブラウンの髪をしていた。
色としては決して明るすぎるというわけではないのだが、周りが黒だということもあって、その腰まで伸びる髪は目立ちすぎるのだ。
まったく、入学初日に規則を破るなんて、偏差値はそこそこ高いはずなのに……。
と、考えてボーっとその背中を眺めていたら、いつも間にかその人も俺の方を見ていた。
「あ」
不意なことで間抜けにもそんな声をだしてしまう。
一度合ってしまった目をそらすこともできず、数秒そのままこう着状態が続く。
すっきりした顔立ちで、鼻がすらっと中央にそびえ、薄桃色の唇に、長いまつ毛。
何よりダークブラウンの髪と澄んだ瞳に俺はしばし夢中になってしまった。
一言でいえば美人、それに尽きる。
って、こんなことを考えている場合じゃない。
さすがに気まずくなってどうしようか戸惑っていると、その彼女はニコリと微笑んできた。
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