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車は彼がいつも三十分かけて走り抜ける町を、あっという間に通りすぎ、低い山が連なった広大な住宅造成地に差しかかる。
今でこそ隙間なく建物に埋めつくされたその辺りは、雑木林に空き地と建設機械ばかりが目立つ何もない場所に、鉄塔と広い道路だけが何処までも続いていた。
ミウラは、幾重にも楕円形が重なった、目が回りそうな侵入路を抜けて、第三京浜に乗り入れた。
本線に合流すると、男は助手席の彼に向かってニヤッと笑い、
「おい、シートベルトはしっかり締まってるよな」と、念を押した。
彼は興奮で震える声で「うん。大丈夫」と、こたえた。
「飛ばすぜ」
男はギアを変えると、アクセルを踏みつけた。
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