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街中では不機嫌そうな音をたてていたミッションとエンジンが、歓喜にうち震えるかのように、高周波のサウンドを高らかと奏でる。
それと同時に彼の背中は、シートに押し付けられ、首を動かすことすら出来なくなった。
まるで何かの冗談みたいに、風景が後ろに飛んでいく。
速度差がありすぎて、周りの車は止まっているようにしか見えない。
男はアクセルとクラッチを駆使し、スムーズにギアを繋げスピードを上げる。
車内は、凄まじい轟音に満たされるが、彼は少しも不快ではなかった。いや、むしろゾクゾクするような興奮を覚えた。
おそるおそるスピードメーターを見ると、その針は時速250キロに差しかかるところだった。
信じられないことに、車はまだじわじわと速度を上げている。
エンジンルームから聞こえる音が、金属的な音をたてながら一直線に高まっていく。
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