短編

His little friends

そして珍しい自動車を見つけたときには、胸が高まる思いがしたものだ。

獲物を求めて、親には内緒で、四つ先の駅まで遠征することさえあった。

自動車は昆虫とちがって、網で捕まえて虫籠にほうり込むわけにもいかず、彼は獲物を見つけると、祖父にもらったリコー・オートハーフのシャッターを切った。

自動車の知識は、保育社のカラーブックスの『自動車』を手始めに、線路脇にあった、小便臭い古本屋で『カーグラフィック』を買い漁るころには、いっぱしの自動車通を自認するようになっていた。

家から三キロも離れたガソリンスタンドで発見した、三輪自動車のメッサーシュミットや、ひっそりとした住宅街の、屋根つきガレージで見つけたアルファロメオ1750GTVは、アブラゼミを50匹捕らえたときよりも彼を興奮させた。

ある日いつものように、獲物を探してパトロールしていると、隣の駅の近くの木造二階建てアパートの横に、信じられないようなとびきりの獲物を発見した。