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オレンジ色のその車は、地を這うような低いボディを、ブロック塀の傍らに横たえていた。
精悍なその姿は、さながら猫科の肉食獣を想わせる。
そしてグラマラスなボディには、我が家のクラウンの倍も太いピレリ・タイヤが納まっていた。
それより、何よりも彼の心を捉えたのは、ボンネットに開けられたラジエーターに空気を流通させるための四角い穴と、ヘッドライトの周りに施された細い線のような縦のバーだった。
特にヘッドライト周りの装飾は、“睫毛”と呼ばれる、その車の外見上の有名な特徴である。
ランボルギーニ・ミウラ P400S。それがその車の名前だ。
ミウラは、当時流行っていたマンガの、主人公のライバルの車として登場する、特に子どもに人気があった車である。
そのマンガのおかげで、スーパーカーブームが巻きおこり、子どもたちはまるでアイドルを追い回すように、フェラーリやランボルギーニを追いかけ写真におさめた。
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