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しかし彼は、そうした子どもたちを、冷ややかな眼で見ていた。
所詮大人が仕掛けたブームに乗せられたガキ共だ。
やつらに自動車の本当の魅力などわかりはしない。
だいいちあの連中は、コルティナ・ロータスの渋いブリティッシュ・レーシング・グリーンのストライプや、ルノー・ゴルディーニのハの字になった後輪のネガティブキャンバーを見ても、そこいらの乗用車と見分けがつかないだろう。
ましてや、スカイラインGTBの長いボンネットの下で唸る、ツインチョーク・ウェーバーの音を聴いたとしても何も感じないような、ただ単にブームだけを追いかける浅薄な輩だ。
このブームが去れば、車のことなどさっさと忘れ、アイドルの尻を追いかけまわすにちがいない。
彼は、そう断じていた。
だから、そんな連中が騒いでいたスーパーカーには、一種の反感すら感じていた。
しかし、そんな感情を持っていたとしても、目の前に佇むミウラは、圧倒的な存在感をもって彼を魅了した。
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