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その男は、ひとを小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、彼を見下して言った。
まだ若いくせに、男には妙な威圧感があり、内気だった彼は、圧倒されて一瞬言葉を失った。
しかし、ブームに乗って騒いでいる連中といっしょにされるのは我慢がならず、思わず口を開いた。
「ちがう。ぼくは車が好きなだけだ」
男は、馬鹿にするように笑った。
「へえ、おまえが好きな車は、ランボルギーニ・ミウラなのか?
――そうじゃなきゃ、フェラーリのベルリネッタボクサーだろ?」
「ミウラは好きだけど、いちばん好きな車はコーティナ・ロータスだ」
彼は以前から憧れていた、イギリスの四角い普通のセダンに、ロータスのDOHCエンジンを搭載したツーリングカーの名前をあげた。
ミウラは大好きだったが、素直に認めるのが癪だった。
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