第1章

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山から降り、近くの森へと向かう。そして森の中をしばらく徘徊するように歩きまわる。もちろん、獲物を探すために。 しかし、流石にそう簡単には見つからない。それもそうだ。見つかるのならこんなには苦労しない。 うるさく鳴く腹を無視しつつ、獲物を探す。 すると、微かに血の臭いがするのを鼻が捉えた。 途端、歩みを極力までに慎重にして音と気配を消す。血の臭いがする方向に向けて静かに歩み寄る。 血の臭いが強くなる。同時に、何かが肉を裂いている音が聞こえる。 藪から見つからないようにそっと顔を出す。 大きな鳥が鹿を啄んでいた。しかも、鹿はかなり立派な角を携えている、上物。 藪から出て近づくと、音に気が付いて鳥がこちらを見る。 鳥の周辺をじっくり、ゆっくり回って様子を見る。鳥もこちらから目を離さない。 一歩近づく。 同時に鳥が翼を広げて威嚇する。 やはり大きい。翼を広げたその姿につい圧倒されて後ろに下がってしまう。だが、こちらも食事がかかっている。牙を剥き出しにし、唸り声を上げる。 しばらく膠着状態が続く。お互いに退くつもりはない様子。 先に飛びかかる。鳥は意外にも羽ばたいて逃げていってしまう。 勝った。
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