第1章

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六畳ほどの若旦那の自室は、男性にしては片付いている。 本棚には経営学の本などが並び、その一角に花の鉢植えを抱えた女性の写真が飾ってあった。 独身ではあるが恋人がいるのかもしれない。 窓には生成りの味気ないカーテンと、シャツがブラ下がっている。 その部屋に服部と、騒ぎを聞きつけてやって来た安藤、その二人の前で土下座する女将と若旦那がいた。 桔梗の間では、騒音がひどくて話などできる状態ではなかったので、若旦那の私室へと場所を移したのだ。 「頭を上げて下さい。お話を聞きたいんです」 安藤が言うと、二人はそろそろと顔を上げた。 どちらも唇をきつく噛んで、申し訳なさそうな表情をしている。 「我々の部屋に、何の用だったんでしょう」 服部が聞いた。 だが予想した通り、若旦那は口をつぐんでいる。 そんな様子の息子を見て、女将がもう一度額を畳にこすりつけた。 「申し訳ございません! お客様が就寝中のお部屋に無断で忍びこむなんて……どんな理由があろうと許されることではありません」 若旦那も再度、頭を下げる。 「その理由をお聞きしたいんです」 服部の落ち着いた声に、女将は「どうしてなの? 言いなさい」と小声で息子を促した。
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