第1章

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すると安藤が神妙な面持ちで 「僕の推理なんですけど……」 と言い出した。 「宴会のあと、何か特別なことをしたかなぁ……って考えたんですが、僕ら救護班のうち何名かは、あそこで土産を買ったんですよ」 と、ロビー横にある土産物コーナーを指さした。今はもう閉店している。 「もしかして、その土産物を取り戻しに来たとか……」 服部は眉根を寄せた。 「なぜ」 「ホラ、この間もあったじゃないですか。外国からの土産物の中に、禁止されてるワイセツ雑誌をまぎれこませて持ち込もうとした男。あんな感じで、土産物の中に何かヤバいものを隠してたんじゃないですかね」 「なんで土産物なんかに。さっさと自室に持ってって隠しとけばいいだろ」 「誰かが来たりして、自分の部屋まで持っていくヒマがなかったんですよ。とっさに近くにあった土産物にまぎれこませ、あとで回収しようと思ってたら僕たちが買っちゃったあとで……」 服部は体を丸めて、自分の膝の上に頬杖をついた。 可能性は皆無とは言わないが、土産物として売っているのはほとんどが菓子で、包装紙はきっちりと糊付けされている。 そこに何かを紛れ込ませるのは、少々無理があるように思う。 服部が乗り気でないのを見て 「まぁ……もうこの件に関しては厳重注意で終わったんですから、いいですけどね」 と安藤はあくびをし 「じゃ、僕は寝ますね。もうクッタクタです。落合さんを運ぶのだけで三十分かかりましたから」 などと愚痴をこぼしながら部屋へ戻って行った。 後輩を見送りながら、服部はまだ一人で薄暗いロビーに残り、煙草をふかした。
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