65人が本棚に入れています
本棚に追加
再び一人きりになった服部は、今頃部屋で開花しているであろう月下美人のことを思った。
若旦那の言うことが本当なら、今頃あの部屋には康子が花を愛でながら、彼のことを待っているのかもしれない。
だが実際に見たこともないものを信じるのは難しい。
それを人にわかってもらうことの厳しさも、身をもって知っている。
だから若旦那の問いかけには返答しなかった。
だがフト思い出す。
布団に入ったとき、あの花の方向から微かな物音がしたことを。
あの時は花が開く音だと勝手に思っていたが、果たして本当にそうだったのだろうか……。
最初のコメントを投稿しよう!