第二章

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私は何度も、彼に誘われる度に断った。 「ごめんなさい。息子が保育園で待ってるんです。迎えに行かなくちゃ。今、電話取れないんです。すみません。」 「ごめんなさい。息子に今、夕ご飯作っているんです。お風呂入れないといけないんです。」 「今、寝かさないといけないんです。この子が寝る前には絵本読んであげないと、この子寝れないんです。ごめんなさい。」 すると、彼はいつも「すいません、そんな大切な時に連絡してしまって」と、謝ってきた。 文末はいつも、「それでも、気になって。連絡したくて、連絡してしまいました。ごめんなさい。」の文章で締めくくられていた。 息子が生まれてからは、私の中心は全て、息子だった。息子と、仕事のこと以外考えている余裕もなかった。 昔、必死で婚活していた頃。 彼が忘れたくて寂しさを埋めるためには どんな手段も問わなかった頃だったなら。すんなり、彼を受け入れていただろう。 だけど、今の私には、息子が独り立ちできるまで側にいてあげなければならないという責任が常にあった。 女の幸せとは何か。 誰かに幸せにしてもらうことから、誰かを幸せにすることへ。 私の中で息子と共に意識が変わっていった最中だったの。 恋は、本当にタイミングね。 自分の中で恋する用意が出来ていなければ受け止めることなど出来ないわ。 だけど、彼からのメールが私から息子を気づかう文章に変わっていったことから、少しずつ私の中で彼に対する気持ちの変化が生まれていったの。
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