僕と少女と殺人現場

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「庭から毒物が見つかりました」 白衣を着た男の人が冷淡に言った。 僕の家に父さんはいない。僕がまだ幼かった頃に、母さんと離婚していた。顔はよく覚えていないが、なかなか家に帰ってこない、典型的な仕事人間だったそうだ。 そんなこんなで、家には母さんと僕の二人だけで暮らしていた。 そしてつい先ほど─そのたった一人の家族を失った。 我が家は今、紺色や白い服を着た人たちで覆いつくされている。二人だけで生計を立てていたこの家に、たくさんの他人が足を踏み込んでいる。 信じられない。 いや、僕の頭が信じようとしない。 これから先もずっと、当たり前のように母さんがいて、当たり前のようにいつも喧嘩して……そんな人生を送るんじゃなかったのか。 倒れていた母さんを発見した後、すぐに僕は救急車を呼んだ。十分足らずで我が家に到着した救急車だったが、地獄のように長く苦しい時間だった。 倒れた母さんの付き添いとして救急車に同乗した僕は、ずっと母さんの手を握っていた。たくさんの管が繋がれ、救急隊員に覆われたベッドから唯一はみ出していた、細くか弱い手だった。 こんな小さな手で家庭を支えていたのかと思うと、涙が止まらなかった。 病院に着くと、すぐに母さんは手術室に運ばれた。『手術中』というランプが赤く点灯した部屋の入口の前で、僕は必死に無事を祈った。ソファーに腰をかけ、涙で歪んだ視界を何度も拭いながら。
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