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ランプが消灯し、中からベッドに横たわる母さんと看護師と医師が数名出てきた。
その先頭にいた医師の表情で、全てを悟った。
「我々は最善を尽くしました。しかし──」
「大丈夫……です。わかっ…てます」
唇を噛んで必死に嗚咽を堪えながら、医師の言葉を遮った。
事実を言葉にしてほしくなかった。目に見える形で現実を受け入れられる程、僕はまだ大人じゃなかった。
お通夜もお葬式も、ぼーっとしている間に終わっていた。親戚やいとこたちは僕のもとに寄ってきて、数々の労いの言葉をかけてくれた。
ただ、数年前まで僕の父さんだった人物は、こんな時でさえ姿を現さなかった。
そしてその数日後、親戚の家に預けられていた僕に、警察から電話があった。
警察の電話というだけでも内心落ち着かないのに、そこでさらに衝撃の事実が告げられた。
『神島 悦子さんは、何者かに殺害された可能性があります』
これには動揺を隠せなかった。
「母さんが……殺された?」
警察の話によると、母の死因は毒物で、当初は自殺の線で捜査が進められていたが、どうも辻褄が合わなかったらしい。さらに母さんの身の回りからは毒物の入手先も割れなかったため、警察は他殺と見たらしい。
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