僕と少女と駄菓子屋

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「それにしても……」 アリシアの黒く艶のある髪が揺れた。 「幸せそうな家族じゃったのう」 あれ、と思った。アリシアの笑顔は柔らかくて、心からほほえんでいる。それがおかしいという訳ではないが、とてもこの笑顔は十数人もの人々をその手で殺した殺人鬼のものとは思えなかった。 本当に彼女は、殺人なんて犯しているのだろうか。 「どうしたんじゃ?そんなに浮かない顔して」 「あ、いや、別に……何でもないよアリシア」 僕がアリシアをあまり恐れない理由が、少しだけ分かった気がした。 「そういえば、その"アリシア"って呼び方止めてくれんかのう」 しまった、そりゃそうだよな。いくらなんでも誰が付けたかも分からない殺人鬼のあだ名を、使われて嬉しいやつなんていないよな。 「照れるからのう」 ありゃりゃ。 「ちょっ、殺人鬼呼ばわりされるのが嫌なんじゃないの!?」 僕の驚きをものともせず、アリシアは頬を赤らめている。 「何を言っとんじゃ、そんなくそかっちょいー名前、わしがマスコミに流したに決まっとろうが」 「ええ!!そうなの!」 「苦心して考えたんじゃぞ?アリシアっちゅーのはギリシャ語で真実を意味するアルテイアに由来してのう……」
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