僕と少女と殺人現場

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テレビの電源を入れると、今日も殺人事件のニュースが流れている。 『容疑者は、同じマンションに住む無職の男性で…………』 冷淡な表情で記事を読み上げるアナウンサー。流れる犯行現場。いつも通りの、見慣れた光景。 犯行現場も、動機も、時間帯もまちまちだ。いくら容疑を否認していようがしていまいが、フードを被って警察に連れていかれる彼らは世間の悪と見なされる。 しかしさんざん騒がれたホットな話題も、すぐに人々の記憶から消えていってしまう。いつの間にか、誰の口からも語られなくなる。 ──彼らはなぜ、人を殺したりするのだろう。 ふと、思う時がある。 恨み、嘆き、憤り………… 思い浮かぶ黒い感情たち。殺人を犯すのは人間だが、彼らを突き動かしているのはその渦巻いた感情だ。 心は時に恐ろしい。どんなに温厚な人でも、濁った感情には逆らえない。 「誰でもよかったんだ」 彼らは言う。この言葉の真意はなんだろう。ただただ"狂った殺人鬼"という言葉だけで丸く収まるものなのだろうか。 社会で激動している僕らは、他人のことにまでかまっている暇は無い。「かわいそうに」とニュースを見て呟いてみても、それっきりだ。何も出来ない。 しかし突然、それが身近な出来事になったら?今まで考えもしなかった"殺人"という鈍い響きが、何の前触れもなく耳元でささやかれ始めたら? そんな少年のお話。
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