僕と少女と殺人現場

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僕も……彼女にどこか惹かれているのだろうか。いや、認めよう。僕が最初に"アリシア"という存在を知ったときに、胸が強く鼓動を打ったのは隠し難い事実だ。 故に、僕も健全な中学二年生ということであろうか。 だが惹かれたのは、恋愛感情とかそういうのではない。これは自信を持って言える。 突き動かされたと言ってもいい。見えない何かに背中を押されるように、自然と興味がわいたのだ。 朝の提出物をファイルから取り出しつつ、そっとアリシアトークに耳を傾けてみた。こういうところは、自分でもかわいらしいと思う。 「自分でもかわいらしいと思う」なんて堂々と豪語する男子中学生などなかなかいないと思うが、身長も低くてお坊っちゃまヘアーの僕は、どちらかというと"かわいい系男子"である。 残念ながらアリシアトークは男子中学生の妄想トーク化していたため、新たな情報は得られなかった。 「きっとアリシアは背が高くスラッとしててぇ……ナイスバディのお姉さ」僕はとっさに耳をふさいだ。必要のない情報はいらない。 「よし、練習はここまでだー!」 キャプテンの合図で、皆が地面に転がったテニスボールを拾い始めた。僕も最後に浮き玉を綺麗にストロークしてボール拾いに移った。 「ん~…………ああー!」 ギラギラと照りつける太陽に向かって大きく伸びをする。今日も平凡な学校の一日が終わった。放課後の部活動を終えて、僕はそんなことを考える。 汗でびっしょりと濡れた男たちが集う部室はなかなかの臭いだ。僕はそそくさと着替えて、帰路についた。
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