僕と少女と新聞記者

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何故だ。この半年間、欠片も情報を握られることなく逃亡を続けてきたアリシアが、こうも簡単に人の餌食になるというのか。 完璧だと思っていた。アリシアに心配はいらないと。僕はバカだ。アリシアはその大きな肩書きを覗けば、紛れもないひとりの少女なのだ。 理由はいくつか考えられるが、一つは彼女が怒りを覚えていたということだ。 普段の冷静なアリシアなら、こんな無防備な場所で眠りについたりなんかしなかった。人の気配を感じていたならなおさらだ。しかし先程、僕はアリシアを怒らせてしまっていた。 そしてもう一つの大きな理由。それは僕だ。 僕がいなければ、彼女は気配を察知してすぐさまその場から逃げていただろう。だがそうもいかない。僕はアリシアの情報を誰よりも持っているし、何よりアリシアなら……きっと僕を庇おうとしてくれた。だから、今の状況になっているんだ。 一歩身を乗り出した。助けなきゃ。頼りっぱなしじゃだめだ。僕にも男のプライドがある。だから……頼むから動いてくれよ僕の体ァ! なかなかその一歩が踏み出せない。それどころか音をたてずに、その場をやり過ごそうとしている自分がいる。恐ろしいと思った。 「ヒロキ……」 アリシアは目の前にいる。僕の助けを待っている。僕を頼りにしてくれている。 もう目の前で誰も死なせたくない。 今行かなくて、いつ行くというのだ。 拳に全身の力を込める。幸い男たちはアリシアに襲いかかることに夢中で、近くに僕がいることなど微塵も気づいていない。 ズボンのポケットに足元の小石をいくつか詰め込んだ。
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