僕と少女と殺人鬼。

僕と少女と新聞記者

「さあて……邪魔者はいなくなった。大人しくお兄さんたちのもとへおいで。なーに、痛いことはしないさ」

ジャリ、ジャリ。ボス格の男の足音に続いて、音が増えていく。僕の力じゃ、気絶させようなんて無理な話だったのだ。

アリシア……ごめん。

横目でアリシアを見る。二メートル程先で小さな体をガクガクと震わせて、怯えているように見えた。

少なくとも男たちの目にはそう映っただろう。しかしアリシアの鋭い眼差しは、決して諦めていなかった。

…………危ない。本当の意味でアリシアを裏切るところだった。

手立てはないかもしれない。……いや、ある。きっとあるはずだ。起き上がって懸命に辺りを見回す。脳に血が満ち溢れている。

…………ん？

男たちに目を移した時だった。彼らの服装は、皆統一されて黒のメタリックに光るスーツだった。

…………そうか。

先程のバイクの音を思い出す。一つではなく、幾重にも重なっていたバイク音を。つまりこの男たちは、バイクに乗ってここまで来たのだ。何のつもりか分からないが、彼らが来ているのはきっと地上では重くて動きにくいバイクスーツ。

それが水上ならなおさらだろう。

川の方を見る。向こう岸はコンクリートの壁が立ちはだかっているが、それはむしろ男たちを油断させるのには好都合だ。

「アリシア、川だ。川に逃げよう。アイツらはきっと、水の中では思うように動けないはずだ！」

「……その案、乗った」

その言葉を皮切りに、僕とアリシアは川へ向かって走り出した。慌てて男たちも後を追ってくる。