僕と少女と新聞記者

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        * 気づいたら、太陽の光が僕を照らしていた。 体が重くて起き上がれない。服が水を吸っているからではない。僕の体自体が重く凝り固まっているのだ。疲労感で頭がボーっとする。 小鳥のさえずり、風で揺れる木々。「平和」という言葉が、真っ先に思い浮かぶような日溜まりの中。 「おおヒロキっ!起きたか」 僕の視界に、ひょこっと少女が現れる。サラサラの髪をふわっと揺らして、大きな瞳をくりくりと動かす。 幸せだ。このままこの草原に埋もれていたい。 この数日間で、色々と経験しすぎた。 母が殺され、殺人鬼の少女と出会い 人の死を肌で感じ、実の父と初めて顔を合わせた。 どれもこれも、非日常的な巡り合わせだ。このままいけば、いつか精神がイカれてしまうのではないかと思っている。 僕には少し休養が必要だ。体も心も、最大限に疲れ果てている。 だけどそうのんきにもしていられない。次の"殺人"を犯すために、アリシアはまた忙しくこの国を回らなければならないのだろう。僕もそれに付いていきたい。面白いものが見れるかもしれないとか、犯人が知りたいとかじゃない。ただ純粋にアリシアと居たいのだ。 「ん、ん~っ……とりゃ!」 掛け声で起き上がる。あれから僕らは森の中に逃げ込んで、その後は覚えていない。普段感じることの出来ない恐怖や怒りという感情に蝕まれて、相当体はくたくただった。安心するや否や、瞼が重くなった次第である。 「ヒロキ、ありがとう。アンタがあの作戦を思い付かんかったら、わしは助かっておらんかった」
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