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「へ……?」
突拍子に褒められると、正面からアリシアを見つめられなくなる。恥ずかしさを紛らすために、言葉もぶっきらぼうになる。
「そ、そんなことないって。それよりお前、何であんな奴らに負けてたんだよ。お前の実力なら……」
「わしが……もしあやつらを力づくでねじ伏せたとして。そんなことしたら、名が知れ渡ってしまうかもしれん。あやつらはわしの顔を見とるし、変に情報が出回ってしまう可能性もある」
だから手出し出来なかったのか。アリシアにも、力ある所以の苦労があるんだな。
「だから、わしにとって一番リスクの低い方法を考えてくれたお前には、感謝しとる。素直に照れたらどうじゃ」
ひひひっといたずらに笑うアリシア。本当は僕が褒められて嬉しいことを知っている。つくづく意地悪なやつだ。
「で……次の目的地はどこなんだよ」
話を反らすことにした。もちろん顔が火照っているのでアリシアの方を向くことは出来ない。
「ここから少し歩いたところにある新聞社の、編集長さんじゃ。ヒロキ、行けるかの?」
大丈夫だ、と言って立ち上がる。もう少し寝ていたいというのが本音だが、それよりもアリシアのそばを離れるのは嫌だ。
「そうか。街に出る道は知っておる、着いてこい」
歩き出したアリシアの背中を追った。いつも僕は後ろを追うばかりだ。それでも自責の念を感じないでいられるのは、アリシアに認められたから。そんな理由だろう。
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