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「何じゃ……これは」
街に出た途端に、僕らは壁一面に貼られたポスターに釘付けになった。そこに印刷されているのは、僕の隣で何か恐ろしいものでも見たかのように怯えている、アリシアの姿と瓜二つの写真だった。
間違いない。アリシアは情報を掴まれたのだ。
「一体……何で……」
「お母様」
確かに、アリシアはそう呟いた。住宅街の壁中に貼られたアリシアの表情が、全て悲しげに映る。
「母さんだって……?お前を拾った女が、この情報を流したのか?」
ポスターに刻まれた『懸賞金5000万円』という文字。溜まりに溜まったアリシアの"犯罪"』は、未成年にしては異例の莫大な金額へと成り果てていた。
「…………ふふ、さすがじゃ。見極めが実に上手い。一番おいしく赤く熟れたものを、瞬時に見分けられる」
アリシアは嬉しそうな悲しそうな、複雑な表情だ。
「じゃ……じゃあお前、このまま大人しく捕まってあの女に懸賞金を稼がせるのか?」
「そういうことじゃの。それまで起こせるだけの殺人は起こしておきたいの。後悔はしておらん」
強い眼差し。一体どうやったら、こんなに力強く真っ直ぐな表情が出来るのだろうか。
「そんな……そんなことのためにお前は、今まで命懸けで罪を被ってきたのかよ」
にっこりと笑うアリシア。この小さな体には、僕も世間も知らない重い荷物が抱えられている。それを一人で、彼女は背負っていたのだ。
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