僕と少女と殺人鬼

2/20

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「さっきからまるで女にフラれたみたいな顔をしているね。どうしたんだい?」 どこかへ逃げようとする僕に、田沢は懸命に付いてきた。いちいち質問の仕方も鬱陶しい。まるでハエみたいに、僕の周りをぶんぶんと駆け回る。 最近の記者は皆そうなのだろうか。 「ね?ね?お願い!少しでいいから俺の質問に答えて?どんな些細なことでもいいんだ!」 悪い人ではないのは分かる。純粋に?知識欲に刈られた青年であることは間違いない。だが今の自分に出来ることは、少しでもアリシアの邪魔にならないよう努めることだけだ。 さっきからずっと同じ道をぐるぐると回っているような気がするが、それでも一向にこの男は諦めようとしない。 「じゃあさ、これならどうかな。情報を伝えてくれた女と、直接対談をさせてたげる!とか」 ピタリ。僕は足を止めた。僕の中で、黒い感情が渦を巻く。 「あの女……まだ貴女方の新聞社にいるんですか 「そうだよ?そしてキミと会ってゆっくり話がしたいとも言っていた」 「ふざけやがって!!」 ひええ、と田沢が伸び上がる。どれもこれもあの女のせいだ。会ってゆっくり話がしたい?何を考えているんだ? じわじわと、復讐の念が僕を蝕んでいく。今もしあの女を排除出来れば、これ以上アリシアの立場が危うくなることはない。自分勝手な思いだということは分かっている。まるでアリシアのためを思ってやっていることは、アリシアからすれば迷惑であることも。だけど。 「田沢さん……案内してください」 「えっ、話を聞かせてくれるの?やったー!」 「その女に会うだけです。いいから早く連れていってください」 逃げるように距離を置いて、手招きをする田沢。僕はアリシアが腰に巻いていたロープから携帯用ナイフを取り出すと、ポケットにしまった。 「キミ、何だか恐ろしいヤツだね」
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加