僕と少女と殺人現場

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何だったのかな…… あの力強い眼差し。一定の距離を保つ姿勢。 普通じゃなかった。僕が一体何をしたと言うのだろう。 考え事をしながら歩いていると、いつの間にか家に着いていた。 ドアの前に経ってから、なぜかその後の一歩が踏み出せなかった。今になって、朝母さんに対して冷たい態度を取ったことを後悔した。 ──母さん、怒ってるかな……ここ最近ずっとあんな調子で、せっかく作ってくれた朝ごはんも食べずに出ていって…… 鍵を開け、ドアノブを握って、カチャリ、と静かにドアを開けた。顔だけを中に突っ込むと、温かい空気が外に吹き抜けていった。 ああ、家のにおいだ。やっぱり何だかんだ言って、我が家の雰囲気は落ち着く。 靴を丁寧に脱いで、玄関を上がった。アイスを食べて喉が乾いたので、牛乳でも飲もうかと冷蔵庫のある台所へ向かった。 そして台所に踏み込んだ時だった。 「え…………母さん?」 目の前の光景に体が硬直した。背筋から手足にかけて、冷たく鋭い電流が走る。一歩、また一歩と震える足を後退させる。 開いたままで閉じようとしない僕の目に映ったのは── 冷たい床にぐったりと倒れている、母さんの姿だった。
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