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あるところに、大金持ちの男が居た。
その男は、休日を利用して、仲の良い科学者の元まで来ていた。
「博士、久しぶりだな」
「おお、きみか。久しぶりだね」
研究室内にあるイスに座ると、二人は思い出話に花を咲かせた。
男は、ふいに部屋の隅に目を向けると、女性の人形が立っていた。
「おい、あれはなんだい?」
「ん? ああ、あれはロボットだよ」
「ロボット? そうは見えないけど」
「人間と間違うほどに、綺麗に作ったからね。そのロボットは家事は出来るし、歌を歌うことも出来るし、雑談なんかも出来る」
「へー、万能なんだな」
男は、ロボットについての話を聞いていくうちに、だんだんとそのロボットが欲しくなった。
「なあ、よければそのロボットを一週間貸してくれないか? なんなら金を払っても良い。いくらだい」
「いや、金は要らないけど、そんなにこのロボットのことが気に入ったのなら、貸してあげよう」
「本当かい、ありがとう」
嬉々と、男はロボットを家に持って帰った。
命令したことは従順に従い、なんでもこなし、暇潰しに雑談をしたり、ビリヤードをしたりした。男は満足していた。このロボットを得るために、全財産を払っても良いとさえ思うほどに。しかし、一つだけ疑問に思っていることがあった。
それから一週間が経ち、約束通りに男はロボットを連れて、研究所まで来た。
「ありがとう、博士。博士の言う通り、あのロボットは優秀だよ。何をやるにも人間らしい」
「そうだろ」
「けど一つだけ、不思議に思っていることがあるんだが、何故外見は人間で、人間らしい仕草や雑談が出来るのに、どこかロボットだと感じてしまうのだろう」
「それはそうだろう。なにせ、そいつはロボットなんだから。いくら人間らしい外見や会話が出来ても、人間の心までは真似出来ないんだ。だから人間は素晴らしいんだ」
「ああ、なるほど」
金をいくら払ってでも欲しいと思わせる所がロボットで、人間が一緒に居たいと思うのは、いくら払ってでもじゃないもんな。
納得した男は、目の前に出された紅茶を一口飲んだ。
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