第1章

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紅く塗りつぶされた空を、俺はただぼんやりと眺めている。 確かに先ほどまで俺は『彼女』と二人そこにいたんだ。 「(そうだ・・・確か今日は凛と遊園地に・・・それで・・・バスに乗って・・・あれ?)」 そこまで考えて自分の声が出ていない事に気づく。 違和感を感じて手を喉に持っていこうとしても俺の体はまったく動いてはくれない。 ・・・本当はわかっていた。 わかっているんだ。 「・・・・・・」 必死に彼女の名前を呼んで、手を伸ばす。 どこに彼女がいるかもわからないまま、紅く染まった空を掻き毟ってるうちに眩暈が強くなりはじめた。 なんとなく、本能が死を察する。 「(嫌だ・・・死にたくない。まだ俺は死にたくない)」 涙が血と混じって視界を埋め尽くしていく・・・その中で彼女の名前だけが俺の頭の中を駆け巡っていた。 彼女と出会ったあの日、過ごしてきたあの楽しかった日々・・・彼女に告白したあの日でさえも先ほどまでの事かの様に思い出せる。 そうか・・・これが走馬灯ってやつか。 「・・・・・・!」 きっと、俺がこうなってる以上は彼女も無事ではいないだろう。 神様。 こんなくだらない事で彼女は死ぬのかよ。 なぁ、神様。本当にいるなら俺の願いを最後くらい聞いてくれよ。 ――勝手に俺にこんなくだらない力を与えて世に放ってこの仕打ちはないぜ・・・。 紅かった視界がだんだんと暗い色になっていく。 夕焼けが終わり、夜を迎える様な・・・そんな錯覚。 震える腕を空に伸ばし、枯れた喉から声を捻りだす。 「彼女を・・・助けてくれよ」 声は空に届いただろうか。 彼女に届いたのだろうか。 それを確認する術を考える間もなく・・・。 意識はノイズになり・・・・・・そして消えて行った。 「ここはどこだ・・・」 そこには見知らぬ土地が広がっていた。 いままで全く見たことの無い風景がずっと続いていた。 「なんで俺はこんなところに・・・」 叶が疑問に思ったときあることが頭によぎった。 その瞬間頭を殴られたような痛みが叶を襲った。 「っぐあぁ!っく・・・」 (なんなんだこの痛みはっ・・・ちくしょう・・・っ) なんとかその痛みに耐えながら辺りを歩く。 その時凛のことが頭に浮かぶ。 「凛!凛!」 激痛に耐えながら辺りを全力で走り回る。いくら走っても凛の姿を見つけることができない。 「はぁ・・・はぁ・・・」 落ち着いてきた時事故のことが鮮明に頭に浮かぶ。
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