第1章

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 わざわざ無理な体勢で訊いてきた割には、真田の反応はあっさりとしていて、どうでもいい内容だった。俯せの状態で頭を動かすのはそれなりに苦しい。普段の面倒臭がり屋な彼女ならそんなことをせず頭をソファーに押し付けたままふがふが言っていたはずだ。  そもそもその日の活動について質問してくること自体が今までなかった。各自、思い思いのことをして過ごす。それがこの部室での活動。惰性で一年以上ここに通っている僕を含めたメンバー全員の自明の理で、彼女も例外ではない。 「何かあったんですか?」 「べつに……」  拗ねたような声音で、ひじ掛けにあごを置いて足をバタバタとする。  やっぱりおかしい。  素直に言わないのは物を言わない性格は知っているが、じたばたするような無駄な体力を使わない性格でもあるはずだ。今の彼女は落ち着きがなく、らしくない。何かに浮かれているような、照れ隠しのようなそんな感じだ。
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