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「んっ?」
ふと下ろすと、真田が投げ捨てたカバンが目についた。カバンの口から白い便箋のような物がはみ出している。細かく綺麗な装飾のそれは、ぐだぐだしている彼女にはあまり相応しくない物だった。
「何ですか、これ?」
イスから立ち上がり、僕は彼女の鞄から便箋を拾い上げる。便箋は折り畳まれていて、広げなければ字面が見えないようになっているようだった。高校でよく女子達がやり取りする時に、ルーズリーフをこのように折り畳んでいた覚えがする。
「なんてー?」
聞こえなかったのか、真田は反るようにして上体を起こす。水族館のアシカみたいな姿勢だ。
「だからこれなんですか?」
僕は右手に持った便箋をヒラヒラさせ、真田に見せる。途端、
「そ、それ」と叫んだ彼女は耳まで赤くして僕の方に手を伸ばす。しかし上体を支えていた手がなくなり、バランスを崩した彼女はソファーから床に転がり落ちてしまう。
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