第1章

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万物には終わりがある。彼ははにかみながらそう言った。私がきょとんとしていると、者にも物にも終わりがあるってことだよ。そう言った。どんなに足掻いてもいつかは死ぬ。大切に扱っていてもいつかは壊れる。ついこの前、彼が幼いころに祖父に買ってもらったという靴が壊れてしまったことを思い出した。 「でも何千年も昔の土器が発見されたってことがあるじゃない。それでも終わりはないの?」 私がそう言うと彼は、うっと呟いた。どうやらそこまでは考えていなかったらしい。最後のつめが甘いのが彼の悪いところだ。でも私は彼のそんなところが好きでもある。 「まぁどんなものにも終わりがくるのは確かだろうね。それが早いか遅いかの話なんだろうね」 惚れた弱みなのだろうか。結局私は自分の意見を翻す。だったら論破しなければいいのに何故だか論破したくなる。性というものだろうか。その言葉を聞いた彼の顔が一気に明るくなる。 「あっでもね!一つだけ終わらないものがあるんだよ!なんだと思う?」 そしてこの発言。意見を翻した自分が馬鹿らしくなる。 「………知らない」 なんだか苛々してきたので面倒くさそうに返す。 「正解はね~」 嬉しそうに口を開いたと思ったその時、唇を塞がれた。一瞬遅れて彼にキスされたのだと理解した。恋人なのだからキスをするのは普通だと思うが不意討ちされたのは初めてだった。目を閉じて彼に身を委ねる。名残惜しそうに彼の唇が離れる。 「僕の君に対するこの想いだよ。この想いだけは終わらない。いや終わらせない」 真剣な顔でそんなことを言われた。そして彼はまたはにかんだ。…本当にこの人はなんてずるい人なんだろう。…だから好きになったのだけど。 「……このキザ男が…」 私が言えたのはそれだけ。恥ずかしくてなにも言えない私を見て彼はまた微笑んだ。 私は、面倒な男に惚れてしまったと自分の男を見る目にあきれながら彼をそっと抱き締めた。 どうか終わりませんように。そう願いながら。
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