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Epilogue
「九条さん……九条さん……」
僕は己の手首を
折れるぐらい強く握って目覚めた。
赤いリボンはすでにとけ
一筋の血痕のように床に滑り落ちていた。
息切れし
汗だくの身体。
まるで本物の情事のあとのように
筋肉は収縮し
胸の高鳴りは収まらない。
「もう――こちらにお伺いすることはありません」
セラピストに顔も見られたくなくて
乱れた襟元を掻き合わせ
僕は慌てて席を立った。
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