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嵐の中
どうやってここまで辿り着いたのか
分からない――。
気づけばずぶ濡れのまま
「九条さん……?」
僕は和樹の部屋のドアをノックしていた。
「一体……どうしたの……?」
気でもふれたと思ったのだろう。
夜中に酷い恰好で現れた僕を見て
和樹の手からフィッツジェラルドの名作が滑り落ちた。
「――ただいま」
ドアを閉めるや
「冷たいよ……」
「ごめん」
僕は有無を言わせず
和樹を力いっぱい抱き締めた。
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