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「じーさんのきゅうりが美味いのはわかったけどさ、結局、此処は何処なの?」  じーさんからもらった二本目のきゅうりにかぶりつきながら訊ねる。歯応えがあって本当に美味いのは美味いんだけど、きゅうりだけ食べていたら水分過多で腹を壊しそうだ。 「何度も言わせるな、サクラ領じゃ」 「ああ、うん。それじゃあ何県?」 「“ナニケン”?」 「うん。もしかしてG馬県じゃない?」  いくら質問を重ねても詳しい情報は全く得られない。それどころか難しい顔で黙り込んでしまった  じーさんはそもそも“県”という概念がわからないんじゃないだろうか。でも、確か県という制度が導入されたのはかなり前のことだったはず。そうなるとじーさんはいったい何年生きていることになるのやら……。  まあ、見た目からして尋常じゃないじーさんだから其処まで驚きはしないが。 「じーさん、地図見せてよ」 「先程から思っとったが、お主、中々馴れ馴れしいのお……。ほれ」  ぶちぶち文句を言いつつもじーさんは棚をごそごそやって地図らしきものを取り出してくれた。  古びた茶色い紙。如何にも「昔の地図です」といった感じだ。もしかしてH海道辺りとか載ってないんじゃないか? 恐る恐る地図を覗き込む。 「……俺は五歳児か!」 「な、なんじゃいきなり!」  ぱあんと派手な音を立てて地図をテーブルに叩きつける。勢い余って地図がくしゃりとなる。じーさんに思い切り頭を叩かれた。  痛む頭を滲む視界の中で擦りながら思う。それにしたって、俺を馬鹿にしすぎなのではないかと。  確かに県内有数の馬鹿高校に通う俺ではあるが、さすがに日本地図の大まかな形くらいはわかる。県の場所なんてH海道とO縄とG馬くらいしかわからないけど。それでも県内、しかもこの近所のことなら地理は網羅しているし、今のこの場所さえ示してもらえれば自力で帰ることは出来るだろう。
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