第6話

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月曜日、午前8時55分 始業5分前になりフロア内のほとんどの人が自分のデスクに座りパソコンを立ち上げたり、資料を揃えたりと準備を始める 休み明けのなんとなく弛い雰囲気の中、営業部長に連れられて佑がオフィスに入って来た 私はその様子をチラリと横目で見て、すぐに自分の目の前のパソコンに目を向けた ドアも仕切りもない広いフロアに本当に佑がいる まだイマイチその光景が信じられなくて、どこか他人事のような気分で黙々とパソコンにデザイン画を描いていく 始業のベルが鳴り、それぞれがデスクで作業を開始する 真由ちゃん華子さんはもちろん、デザイン課のメンバーの誰もが私を冷やかすことなく、みんないつも通りだ その光景にホッと胸を撫で下ろしていると、コツコツと皮靴の音が近づいてきた 「おはよう 桐谷君、仕事中にすまないがちょっと挨拶いいかな?」 そう言ってやって来たのは営業部長と佑だった 「はい、ちょっとみんないいか?」 課長のその言葉で全員がその場で立ち上がった 「今日から3ヶ月間うちで研修をする三星堂の上條君だ デザイン課の諸君とは直接関わらないが、同じフロアだし面識ある人もいるだろうから、何かあれば助けてやって欲しい 宜しく頼むな」 「今日からお世話になります、三星堂の上條です 以前、企画にいた時には桐谷課長、橘主任、綾瀬さん、佐伯さんには大変お世話になりました これから3ヶ月間宜しくお願いします」 そう言って頭を下げた後私を見て一瞬驚いた様な表情を見せたが、すぐに元に戻りいつもの人懐こい笑顔でニコッと笑った 佑のその行動に驚き動揺を隠せないでいると、営業部長はそんな私達を見て 「あれ~上條君、もう佐伯さんに目ぇつけたのか?早いな~ でも佐伯さんはダメだぞ、なんでもラブラブな愛しの彼氏がいるらしいからな」 いたたまれなくなって目を伏せ得意気に話す部長を苦笑いで交わすと 「上條君、宜しくな」 課長がそう言ってその場の雰囲気をサッとかえてくれた
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