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『……写真を仕事にしたいけど、アカンかったら京介君の言うように、趣味にするしかしゃーない思う……』
私の視線に耐えきれないというように、美里さんは盆地を取り囲む周りの山々に目を向けた。
何かを考え込むように、現状から逃げ出したいと請うように、美里さんは難しい、けれど、どこか茫洋とした顔のまま黙り込んでしまう。
どこかへいってしまいそうな、そんな遠い目をする彼女に、私は激しい焦燥感に苛まれる。
このまま彼女を、どこか遠くへ連れ去ってしまおうか。
そんな危険な思考が頭を過ぎる。
――――やはりもう時間を掛けてはいられない。
私は美里さんをこの場から連れ出すべく、視線を逸らせた彼女の頬に手を伸ばした。
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