番外編 side 京介

19/19
前へ
/482ページ
次へ
『……写真を仕事にしたいけど、アカンかったら京介君の言うように、趣味にするしかしゃーない思う……』  私の視線に耐えきれないというように、美里さんは盆地を取り囲む周りの山々に目を向けた。  何かを考え込むように、現状から逃げ出したいと請うように、美里さんは難しい、けれど、どこか茫洋とした顔のまま黙り込んでしまう。  どこかへいってしまいそうな、そんな遠い目をする彼女に、私は激しい焦燥感に苛まれる。  このまま彼女を、どこか遠くへ連れ去ってしまおうか。  そんな危険な思考が頭を過ぎる。  ――――やはりもう時間を掛けてはいられない。  私は美里さんをこの場から連れ出すべく、視線を逸らせた彼女の頬に手を伸ばした。
/482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4387人が本棚に入れています
本棚に追加