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それは、美里さんが独りになってしまうから。
彼女を独りになどしておけない。
周りに金城や栞がいれば、美里さんは守られる。
けれど、その守りがなくなれば、無防備な彼女は私の手が届かない場所で危険にさらされてしまうかも知れない。
その憶測は、私に堪え難い苦痛を強いた。
美里さんはキュッと唇を真横に引き結び、答えを待つようにしてじっと私を見据える。
私は仕方ないといった風で口を開いた。
『金城の事務所経由の情報です。貴女の所在もしかり。金城に聞けば分かること』
『実際聞いてへんよな? 金城さんに』
『……事務所経由ですからね』
人づてに聞いているので、金城自身の耳に入ることはまずないのだ、そう語る。
あやふやな回答に、美里さんは胡乱な目を向けてきた。
『……事務所経由ねえ。で、京介君はいつ頃戻る予定なん?』
『さあ。貴女が戻ってくれると言ってくれたら、美里さんと共に速攻で戻りますが』
ニコリとした微笑みの中に、これ以上自由にはさせないと威圧を込める。
美里さんはむっつりと私を睨んでいたのだが。
唐突に、ハッと目を見開いた。
そして、赤みを増してゆく彼女の顔を見て、私はまいったとばかりに苦笑した。
気付いたのだろう。
どうして美里さんが独りの時ばかりに、私が現れるのかを。
もちろん、同行している彼らが邪魔と言うこともある。
けれど一番の理由は、見知らぬ土地に彼女を独り置いておくことなど出来ないからだ。
『き、京介君もしかして、私のこと心配して来てくれてるとかいうん?』
言い淀むようにぽつりと零したその言葉に、私は大きく頷いた。
『当たり前です。この場所も日本より治安が良くない。そんな場所に貴女一人なんて危険すぎます。だから、彼らが日本へ帰国してしまい貴女が独りになってしまう時だけ、私は美里さんに会いに行くと決めたのです』
私の答えに、美里さんの顔は一気に朱を刷いた。
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