番外編 side 京介

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 もぞもぞと所在なさげに視線を泳がせる彼女に、私は続けた。 『で? 私と離れている間、どんな素晴らしい写真が撮れたんですか』  私と離れてまで写真を撮り続けるという選択をしたのだから、さぞかし納得出来るものが撮れたのだろうというイヤミを、言葉と笑顔に乗せて言う。  美里さんはピキンと固まった。 『と、撮れてんけど……で、でもな? 金城さんにも褒められてんで? これで食べていけるほどじゃ、全然ないんやけどな』  最後は尻つぼみになりながら、もごもごと口を濁そうとする美里さんに、私はズバリと痛いところを突いてやる。 『仕事とするのではなく、趣味に留めておくという選択はないんですか?』  美里さんは「うっ」と言葉を詰まらせた。即答できずに眉尻を下げた情けない顔で、私を睨み付ける。  以前彼女は言っていた。  出来うるならば、貯金が尽きるまで、このまま放浪しながら写真を撮り続けていたいのだと。  けれど、彼女は知ってもいた。継続するには、限界があるということを。  わずかなりでも写真集の印税が入ったため、こうして放浪を続けていられるが、いつまでも継続を維持できない。  美里さんが写真だけで食べてゆくことなど、容易ではない。  金城にそこまで認められてはいないのだから。
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