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「ん…」
ぼんやりと目を開けると、無機質な天井が目に映った。
「ここ、は、どこ……?」
少々だるい体を起こし、辺りを見回す。ガラス張りの部屋。灰色の壁。どこまでも静かで無機質な所だ。
≪ーブツッ≫
突然、今までの静寂を破るかのように放送のスイッチが入ったような音がして、びくりとなる。
≪きちんと目覚めたようですね。私の声が聞こえますか?≫
放送のお姉さんの声まで機械的だ。
そこまで無機質にこだわる必要あるのかな?
じゃなくて。
「私に、聞いてるの…?」
≪もちろんです。では、大きな絵の前まで移動してください≫
大きな絵…?ああ、これか。
「…不思議な鳥の絵」
≪貴方は、自分の名前がわかりますか?≫
名前…名前?私の、名前?思い出せない、そもそも名前など私にあったんだろうか?今、どうしてここに居るのか、今まで何をしていたのか、どんな生活を、誰と…?あともう少しでわかりそうなのに。私は、誰?私は、私は、
「私は――私の名前は、久遠 悠」
名前を呟いた途端に目が真っ白に眩んで、私は意識を失った。
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