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「――――いっ!?」
頭に、衝撃が走る。徐々に痛みは増し、それはオレの意識を奪い去ろうとするほど。
あの男をっ、見てるから、か……?
なら見なければいいだけのこと。だが、目を離すことができない。そこの意識だけ、別のモノに支配されたかのような――食い入るように、男から目が離せなかった。
「――透? 信号変わってるよ」
「?――――あぁ、行こうか」
呼ばれたあと、もう一度前を見た。その時にはもう、あの男の姿は無かった。頭の痛みも、嘘のように消えていて。今の今まで、それが夢だったかのように。
誠司と別れると、オレは自転車を取りに行った。
自宅まではここから割りと近い。時間にして十五分。街を抜け走っていると、顔に冷たいものが落ちてきた。
「ん?――――お、雪か」
思わず空を見上げた。
この辺りは冬になっても、なかなか積もることがない。久々に積もるかな? なんて思いながら走れば――気付くと、教会まで来ていた。自然と足は止まり、オレは教会を見た。朝より少なくなったが、まだ入り口近くに野次馬がちらほらと目につく。
それまで、特にここを意識したことがなかった。教会なんて場所は、自分と関係無い場所だったから。
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