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「…………帰ろう」
嫌なイメージを振り払い、自転車を再び走らせようと足をかければ、
■■、■■■……
何処からか、声が聞こえた。
言葉にならない言葉。いや、言葉と言うよりは、うめき声に近い。なんとも言えない声に、オレは怯え始めていた。
雪が降っているせいか、寒気のような、悪寒に近い感覚が体を包む。正直、あまり気分がいいとは言えない。
「…………?」
オレは首を傾げた。今まで目の前には、人だかりができていたはず。なのに人の姿が見えない。入り口まで行っても、誰の姿も見つけられない――そればかりか。
「何も……されてない?」
ここは、人が落ちた現場。なのに、囲いのようなものは無い。
普通テープとか張って、立ち入り禁止にするもんじゃないのか?
■■、■■■――!
また、あの声が聞こえた。
さっきよりも大きく、叫んでいるように聞こえる。何を言っているかわからないが、苦痛めいて……助けをこうような、そんな叫びに思えた。
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