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耳を澄ませば、声は自転車の近くから聞こえるようで。声がする方を、じっと見つめる。それをどれだけ続けていたのか。一分か。十分か。それとも……時間の感覚がわからなくなるっ。
あそこに何かいるのは間違いない。
でも今は何も見えないし、何も聞こえない。嘘なくらい静かな雰囲気に、緊張がピークに達しようとしていた時、
ゴーン、ゴーン―――…。
静けさを破るように、鐘の音が響き渡った。
オレは安堵と驚きの混じる気持ちで、その音を聞いていた。
「…………人が、いる?」
誰でもいい……誰かと会わないと、気が狂いそうだ!
急いで教会に駆け込むと、扉に手をかけた。意外と扉は重く、力を入れ引くと、ぎぎぎ、という音をたてながら、ゆっくりと開いていった。
――そこは、まるで別世界。
ステンドグラスから月明かりが照らし、淡い輝きが、教会の中を包んでいる。
まるで、教会への来訪者を歓迎するかのように。幻想的で、それでいて厳粛な場所。人の手によって造られたそれは、日常とは離れた空間を演出しているかのようだった。
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