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十二月二十四日。今日が終われば冬休みだっていう日に、朝から不吉とも言える光景を見て登校した。
「聞いたか? 教会の前で飛び降りあったって」
オレのところに来るなり、誠司(せいじ)はそう話しかけてきた。
「あぁ。そこ、通学路だからな」
「やっぱ、落ちた人の顔とか見た?」
「……一瞬な」
ほんの少しのことだったのに、やけに鮮明に覚えてる。
頭は横に傾いて、布の間から見える皮膚は赤く、目は見開いたまま。睨まれてる、なんて思うほど鋭いものがあった。
「 透 (とおる)? 大丈夫かお前」
「あぁ……たぶんな」
ふぅ、と思わずため息がもれる。
そんなオレを見て気を遣ったのか、誠司はいつにも増して明るい話題を話し始めた。こういうところが、こいつのいいとこだな。
中学から一緒のこいつは、真道誠司(しんどうせいじ)。なんだかんだで、今でも友人を続けているうちの一人。
髪は耳に軽くかかるぐらいの長さで、薄っすらと茶色。本人曰く、これは地毛であって染めてはないらしい。
成績は可もなく不可もなくと中間を漂っているが、オレから言わせると、手を抜いてるようにしか見えない。本気を出せば、結構上位にいけるんじゃないと思う。
「おはよ~二人とも」
一人の女子が話しかける。
誠司は挨拶代りに片手を上げたが、オレはきちんと挨拶を交わした。
「みんなざわついてるけど……何かあった?」
「楓(かえで)、ここに来るまで聞かなかったのか?」
「別に? ただ、雰囲気がいつもと違うなぁって思ったぐらいよ」
その様子に、誠司が今朝あった出来事を説明した。
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