【雪月夜、鐘の音に誘われ悪を見る】

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「着替えてからまた来ればいいだろう?」 「それがダメなんだよ。今日は姉貴が帰って来るんだ。――帰ったら即、遊ぶ自由なんて無い! いやむしろ、普通に過ごせる自由があるかどうかも疑問だね!」  提案は、いともあっさり却下された。  ま、お姉さんが帰って来るならそれもわからないでもない。 「ならもう、潔く諦めることだな」 「うぅ~……せめて、攻略本だけでも見て帰りたい」  名残惜しそうに、何度も後ろを振り返る誠司。  めちゃくちゃ後ろ髪引かれてるよ。  呆れながらも、とりあえず、希望通り本屋へ足を運んだ。オレは誠司のようにゲーム本は見ないので、普通にマンガを読もうと二階へ向かい、一冊のマンガを手に取った。本を読んでいると、時々思うことがある。周りに人がいても、自分だけの世界に入ってしまう時があるなぁと。――言っておくが、別に危ない人ではない。  本当に時々……思うことがあるんだ。  手を伸ばせば掴めるのに、それがとても遠くに感じる。  人と人との狭間――そう、まるでそこは隔離された世界。  なんてことない日常なのに、今いる世界とは違う。  そんな境界を、体感しているみたいで。
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