0人が本棚に入れています
本棚に追加
「着替えてからまた来ればいいだろう?」
「それがダメなんだよ。今日は姉貴が帰って来るんだ。――帰ったら即、遊ぶ自由なんて無い! いやむしろ、普通に過ごせる自由があるかどうかも疑問だね!」
提案は、いともあっさり却下された。
ま、お姉さんが帰って来るならそれもわからないでもない。
「ならもう、潔く諦めることだな」
「うぅ~……せめて、攻略本だけでも見て帰りたい」
名残惜しそうに、何度も後ろを振り返る誠司。
めちゃくちゃ後ろ髪引かれてるよ。
呆れながらも、とりあえず、希望通り本屋へ足を運んだ。オレは誠司のようにゲーム本は見ないので、普通にマンガを読もうと二階へ向かい、一冊のマンガを手に取った。本を読んでいると、時々思うことがある。周りに人がいても、自分だけの世界に入ってしまう時があるなぁと。――言っておくが、別に危ない人ではない。
本当に時々……思うことがあるんだ。
手を伸ばせば掴めるのに、それがとても遠くに感じる。
人と人との狭間――そう、まるでそこは隔離された世界。
なんてことない日常なのに、今いる世界とは違う。
そんな境界を、体感しているみたいで。
最初のコメントを投稿しよう!