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「――――はぁ~…」
なんか、気分が暗くなった。
朝に見たアレの影響もあるんだろう。今日は色々と、余計な事を考えてしまうようだ。
「誠司~。そろそろ時間じゃないのか?」
「ん? あぁそうだね。これ買うから、先出てて」
わかったと頷き、オレは外へ出た。辺りはもうすっかり日も暮れ、寒さがより一層増している。はく息は、まさに雪のような白さをしていた。
「待たせたね。それじゃあ帰るとしましょうか」
「そうだな。帰り、ちょうどいいのあるのか?」
「あぁ。ピッタシのがあるよ」
いいのがあるのか。それならオレも、駅に着いたらすぐに帰るか。
横断歩道まで行くと、信号が赤に変わった。立ち止まると――何気なく、歩道の先に目をやった。
学生やサラリーマン。私服を着た人など、様々な装いの人が立ってる。時間的に、この人達も帰るところなんだろうなぁ、なんて考えながら見ていると、
「――――?」
違和感を、覚えた。歩道の先に見える人の中。そこに一人、うな垂れたまま立っている男の人がいる。
っ――――悪寒が、走った。
ただ、その人を見ているだけなのに……酷く、気分が悪くなる。次第に視界がぼやけ、霧がかかったみたいに、目の前の景色が見えづらくなっていく。
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