第1章

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遠い昔、 小さい子供だった頃 「アイコちゃんのお歌、  お経みたい」 って伯母に言われた 記憶がある。 「そうよ、  この子は歌が下手でね」 って母までが笑った。 まだ幼稚園にも行ってない 幼い頃。 それから普通に成長して、 中学の音楽の時間、 何よりも嬉しい 時間だったが、 ある日、音楽の先生が、 「音程が狂うよ」 って私に言った。 「来週、試験があるから、  それまでに歌える  ようになりなさい」 って、 クラスで一番歌のうまい 大月さんって女の子に 「アイコさんに  教えてあげてね」 って言った。 大月さんはラジオの のど自慢に 出たことがあって、 よくクラスのみんなの前で 歌わされていた。 キレイな声だった。 私もあんな風に歌いたい。 ちょうど、 大月さんの誕生日の パーティがあって、 私は大月さんの家に よばれていた。 他にもよばれていた子が 3人いて、 それぞれが別々に プレゼントを 持っていくことになった。 私は母に相談し一緒に プレゼントを買いに 商店街へ行った。 「ハンカチとか  キキララのポーチは  きっと誰かが持って  くるから、  これはどう?」 母がすすめたのは、 お湯をかけるだけで お汁粉になる、 ツボに入った お汁粉6個が 入っている箱だった。 まぁ、それもいいか、 と買ってもらい、 自分でうちにあった 緑色のリボンをかけた。 素敵なプレゼント、 人とは違う。 今思うと、 おかしいよね、 お汁粉なんて。 でも昔だから、 それも珍しかったんだろう。 母は甘いものが 大好きだったから それをもらうとうれしいと 思ったんだろう。 まぁ いっか。 終わったことだ、 過ぎたこと。 子供たちは大月さんちに 集まり、ハッピーバースデー の歌を歌った。 大月さんは一段ときれいな 声で歌った。 「ハッピーバースデーツーミー」 って。 「どうしたら歌がうまくなるの?」 って聞いたら、
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