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歌が大好きで
どんな歌でも
知っているので、
人が歌うのを聴くのも
楽しかった。
「これ何の歌だっけ」って
歌詞をワンフレーズ聞くと
私はなんでもわかった。
キーのコントロールも
できるので、
友だちには重宝がられた。
だから自分で歌うことは
ほとんどなくても
存在感があったと思う。
「アイコ、
歌ってないじゃない」
って指摘されたことは
なかったもの。
でも一度、
カラオケボックスで
隣にいた人に
「一緒に歌おう」
って言われ歌った時、
「ちょっと音が違うよ、
つられちゃうから
歌わないでくれる?」
と何気なく
言われてからだ。
おかしくなったのは。
同じころ、別の人にも
悪気はないんだけど
「音程、違うよ」って
言われたことが重なった。
なんで、歌えない?
人が音程を外すと
すぐわかるのに、
こうだよって
歌ってあげられない。
声がでない。
ジレンマ。
私って音痴なんだ。
そう感じてから
人前で声が
出せなくなってしまった。
音痴だってことを
人に知られたくなかった。
音楽は得意の
私のレッテルを
守りたかった。
ある日、
新聞の見出しに大きく
「カラオケで倒れる人続出」
「救急車 出動回数増加」
という文字が踊っていた。
歌を強要される
プレッシャー。
私だけではなかった。
同じ思いの人がいることに
救われた気持ちだった。
そうでなくても、
対人赤面症とか
強迫神経症、
潔癖症や、
人はそれぞれ
いろいろな悩み、苦しみを
抱えて生きている。
何とか乗り越えようと
必死で模索している。
これからカラオケの
機会は多くなるだろう。
もっと年をとって
暇なジイサンバアサンになったら、
楽しくカラオケする機会だって
きっとあるだろう。
歌えない人生って悲しい。
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