第1章

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「逃げないで下さいよ?」 その言葉で、ようやく頭の中で黄色信号が点滅し始める。 捕まえられた左手とともに背後に回り込まれて、他人事のように「これ、やばくないか」なんて考えているうちに左手同様、右手も背後でとめられてしまう。 首筋に後輩のはいた息がかかって、思わず身をよじった。 「もしかして、先輩ってそっちの人ですか」 そっち…て?と考えていることが分かったのか、後輩は耳元に唇を押し付け、低く呟く。 「男でもいい人ってこと。あんた、全然抵抗しないよね」 あ、そういうことか。…って、そんなわけあるか!! 抵抗しないんじゃない。というか、今実際にしているのだけれど。 足を踏もうとしたりとか、つかまれた腕をほどこうと引っ張ったり。 …この体制じゃ、こんなのしか出来ないんだよ!!
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