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「寝腐ってるとは、もう午前の分は終わったぞ」
「痛い、蹴らないでくださいよ。つうか会長のせいでしょっ!?」
保健室に入ってきて早々にさも当然のように蹴りを入れられうつらうつらしていた意識は一気に覚醒へと呼び戻された。
しかしこうして話したのは久し振りだな、なんて思える。
会長の方が萎縮していたというか、俺とは話したくなかったみたいだったし……今はそれを感じない。
「我は民意を反映したまでだ。最もこれほどまでにお前は妬まれ憎まれていたとは思わなかったが」
「あれですか、次は精神攻撃ですか?」
「いやなに、話があったからな。まさか見舞いにきたなんて思ったのか?お前を見舞う我にどんなメリットがある?」
いつになく舌が回っている。
そこに違和感となにか本質からずれたがったが触れないでおこう。
「………あの、それで話って?」
「霞沙羅を娶れ。それが我の最後の命令だ」
「…………逃げるんですか?」
「別に逃げたつまりはない。ただ再会したあいつはお前のことをなんだかとても嬉しそうに話していた。それに嫌がらせ、なんて程度の低い行為は我の本意からズレる、それだけだ」
言い切ると俺がその話題に触れる前に首元に爪を当てられた。
少しでもなにか口にすれば鋭いそれに自動的に食い込み間違いなく俺は怪我をする。
「子供のような屈託のない……心底お前が好きだというのを隠そうとすらしない。あいつがなにに縋ったのか知らんが、少なくとも霞沙羅にとってのお前は希望。それを奪えばあれはもうきっと死を選ぶ。我はそれは避けたい。正直お前のことは今すぐにでも引き裂いてやりたいが……」
瞳に影がありそれが色濃くなる前に会長は俺から退き部屋を出て行った。
なにも言えずなにも出来なかった。
けど会長の少し力のない姿はあまりみたいものではなかった。
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