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それから2時間後
本社会議室では、【和菓子で季節を感じる】の企画説明が行われていた。
「杉原くん、この企画で何を問いかけたいと、思うのかね?」幹部の1人が訊ねる。
「文書にもありますが、【和菓子】の中に、【日本の繊細な美意識】があると気付いたのです。」
「加えて、食材が【和菓子】と決まった時に、日本の良さを世界にアピールするには適切だと判断しました。」
別の幹部から「もう少し補足がないとな…」と声が上がる。
「この企画がどう進むか?で、この種の企画立案のやり方が決まる」
「まだ進行半ばなので、その後の進捗状況を知らせなさい。」
「はい、わかりました。」杉原は、隣にいる薫にいくつかの指示を出し、今回の企画説明は終わった。
会議室から出ると、美優が薫に声をかけた。
「お疲れさま…」「ありがとう」
「うまくいった?」「うん、何とかね…」
「これからまだまだ続くから、あまり気負わないように…って幹部と杉原部長から同じこと言われたわ…」
「みんな、薫が頑張っているのを知っているから、気がかりなのよ。」
「うん、ありがたいことだと思う」「わたしにできることは、手伝うから自分で抱え込まないようにね…」美優が言うと薫は、笑顔を見せた。
昼休み美優は、薫に長野から夕食に誘われたことについて、相談されていた。
「美優、夕方長野さんと食事するけど、上手く喋れるかな?」
「薫、いつもの薫でいなさいなんて、無理だと思うけど、硬くならなくていいんじゃない?」
「そうかな…」「彼だって、緊張しているのは同じじゃないかな…」
「えっ!」「プライベートな時間なんだから、この前と表情違うと思う。」「後は彼に任せてみたら…」薫は、美優の【彼も緊張している】という言葉が信じられなかった。
初対面の担当者に(例え相手が女性であっても)動揺はしないはずだと、思っている。長野にしてみれば、特別に扱う案件でもないのだから…。
美優は、「自分が代役を買って出たい」と、思わず言いかけたが、昨夜坂本に「長野くんが、薫さんに一目惚れしたらしい」と聞かされて、ここは2人でお膳立てをすることにした。
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