揺れる心

3/14
前へ
/36ページ
次へ
それから2時間後 本社会議室では、【和菓子で季節を感じる】の企画説明が行われていた。 「杉原くん、この企画で何を問いかけたいと、思うのかね?」幹部の1人が訊ねる。 「文書にもありますが、【和菓子】の中に、【日本の繊細な美意識】があると気付いたのです。」 「加えて、食材が【和菓子】と決まった時に、日本の良さを世界にアピールするには適切だと判断しました。」 別の幹部から「もう少し補足がないとな…」と声が上がる。 「この企画がどう進むか?で、この種の企画立案のやり方が決まる」 「まだ進行半ばなので、その後の進捗状況を知らせなさい。」 「はい、わかりました。」杉原は、隣にいる薫にいくつかの指示を出し、今回の企画説明は終わった。 会議室から出ると、美優が薫に声をかけた。 「お疲れさま…」「ありがとう」 「うまくいった?」「うん、何とかね…」 「これからまだまだ続くから、あまり気負わないように…って幹部と杉原部長から同じこと言われたわ…」 「みんな、薫が頑張っているのを知っているから、気がかりなのよ。」 「うん、ありがたいことだと思う」「わたしにできることは、手伝うから自分で抱え込まないようにね…」美優が言うと薫は、笑顔を見せた。 昼休み美優は、薫に長野から夕食に誘われたことについて、相談されていた。 「美優、夕方長野さんと食事するけど、上手く喋れるかな?」 「薫、いつもの薫でいなさいなんて、無理だと思うけど、硬くならなくていいんじゃない?」 「そうかな…」「彼だって、緊張しているのは同じじゃないかな…」 「えっ!」「プライベートな時間なんだから、この前と表情違うと思う。」「後は彼に任せてみたら…」薫は、美優の【彼も緊張している】という言葉が信じられなかった。 初対面の担当者に(例え相手が女性であっても)動揺はしないはずだと、思っている。長野にしてみれば、特別に扱う案件でもないのだから…。 美優は、「自分が代役を買って出たい」と、思わず言いかけたが、昨夜坂本に「長野くんが、薫さんに一目惚れしたらしい」と聞かされて、ここは2人でお膳立てをすることにした。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加