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2038年 8月 27日
小学生だった俺は、残りわずかな夏休みに寂しさを覚えながら、遊び回っていた。
宿題?そんなもの7月中に終わらせている。故にいくら遊び回っても何も言われる筋合いは無い。
当時の俺は、そんな生意気な自論を持っていた。
その日はとっても暑い日で。黒いアスファルトから陽炎が立ち上っているのに驚いたりもした。
その日俺は、両親を失った。
夏休みなど無い自衛官だった父。
同僚としても彼をにこやかに支えていた母。
事故。だそうだ。
山間部の研究所がまるまる一つ吹き飛んで、犠牲者が二人の……事故。
そんなわけがあるか。
不意の事故なら周りの人間も死んでいるはずだろ?
逃げ出す余裕があったなら建物の構造を知っている二人が逃げ遅れるわけが無いだろ?
それに父は、身体強化術のスペシャリストだ。母を抱えて逃げる位は造作もなかっただろう。
「…………君が強くなったなら、真実を教えよう」
二人の同僚を見捨てた魔法科学の第一人者はそう言った。
そして失踪した。
魔法を発見し、それまで誰よりもその発展に尽力した彼は、失踪した。
兄弟は無く、祖父母も4人とも死んでしまっていた。
それから俺は、父の弟……叔父の家に厄介になるのであった。
2046年 4月 6日
俺は明日から高校生になる。
国際魔法学院日本校、戦闘技術科
今日は、今までお世話になった叔父夫婦の家を出て学院に近い、今は亡き父方の祖父母の家で1人暮らしを始めるのであった。
「……おじゃまします、よろしくお願いします」
誰もいない家に、そっと一人で呟いた。
「あぁ、よろしく頼むぞ」
「ちょっと待て。」
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