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さて、朝である。5時である。
4月の空は、まだ暗い。
布団があっていたのか、枕があっていたのか、ぐっすりと眠れて疲れも取れている。
入学式へのワクワクとその目的を思い出して、胸の中がざわめく。
あの日から6年。
この時の為に生きてきたようなもんだ。
...頑張ろう。
そう決意しながら一階へ降りて母屋の方へ移動すると
「…なんじゃこりゃ」
コタツの上に、なんとも豪華な朝ごはん。
山なりに盛られた白飯に具だくさんの味噌汁、鮮やかなピンクとこげめの色合いの素晴らしい焼き鮭。
小皿に添えられた漬物はキュウリとナスとカブ。
それが向かい合わせに2セット。
「おぉ、おはようさん」
自称神様が現れた。
もしやと思うが
「これ、お前が…?」
「ふふん、どうじゃ?見直したかー?」
「いや、うん。なんというか…ありがとう」
一応叔父さんの家では料理することもあったので自分で用意するつもりだったが、これは彼女に任せた方が良さそうだ。
「それじゃ…いただきます」
「うむ!…いただきます」
「……ごちそうさまでした」
「おぅ!早いな!」
なんなんだ。
なんであんなシンプルな料理があそこまでおいしくなるんだ。
フワフワしたご飯はそれでいて確かな重みがあり、噛めば一粒ずつが主張してくる。
鮭は外を強火で焼かれていて、それをサクッと噛むと中の脂とほんのりとした塩気が溢れてきて必然的にご飯へ箸がのびる。
そして味噌汁はというと、千切りにされた人参と大根とゴロゴロと大き目のジャガイモ。そして深緑のワカメと輪切りにされた鮮やかなネギ。
それらから煮出た味を煮干しと味噌が上手にまとめている。
漬物はそれぞれが漬け具合が違っており、キュウリは古漬けで酸っぱさが朝の脳を刺激する。
茄子とカブは浅漬けで、茄子のキュッとした食感とカブのカリカリした食感が楽しい。
「すごく美味しかった。ありがとう」
「うむ!満足してもらえて何よりだ!……ふふ、やはりよく食う男子(おのこ)は可愛いなぁ……」
食器を片づけると自室へ向かい、先週届いたばかりの制服に着替える。
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